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手のひら
小さい頃母親を亡くした私は、父と姉の3人で暮らしていた。昼間は仕事で不在の父親に代わって面倒を見てくれたのは13歳の離れた姉だ。
姉は私が8歳のときに結婚した。
旦那さんは私にも優しかったが、母替わりの姉をとられた様な気持ちで私は好きではなかった。
そんな私には同時に弟分ができた。姉の旦那さんが連れてきた私より4歳年下の男の子。
旦那さんの連れ子であったその子が私をを頼りにして後ろを付いてくる姿は可愛かった。
でも、いつもは私を頼っているのに、たまに、私が寂しくなることがあって、辛いことがあって泣きたくなると、いつの間にか横で頭を撫でて慰めてくれる。
そんな男の子の小さい手は、私が立ち上がると届かなくなり、負けじと頑張って片手を伸ばす姿が可愛らしくていつの間にか寂しさは薄れ、温かい気持ちになったものだ。
そんな『手のひら一つ分のぬくもり』は、姉と旦那さんが離婚したことで私から離れていった。
それはまだ、私が大人にはなりきれていない頃のことだった。
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