0人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女はいつも不思議なモノと並んで立っている。どこから来るのかわからない。今宵も、2つの影が現れる。
明日提出の宿題を終わらせるため、私は机に向かっていた。この世に数字を産み出した人間に恨みながら筆を動かす。カリカリと聞いているだけで、眠気が襲ってきた。しかし、終わるまでは寝られない。私はなんとか手を動かし続けた。なんとか集中力を保ち、もうすぐで終わると思った時ーーー背後に視線を感じた。私の後ろにはベッドがあるだけだ。ドアを開ける音も聞いていない。振り返るべきか悩んでいると、もはや聞き慣れた声が言う。
「・・・嫉妬って怖いよね。」
私は振り返った。彼女はベッドの上に立っていた。隣には小さなモノがいる。ボロボロの布の中に無理やり生き物を閉じ込めたような、もぞもぞとした動きでこちらを見ていた。
「この子はね、友達がいなかったの。見た目がボロボロだったから。でも、1人だけ大切にしてくれた子がいたの。女の子でね、他にもたくさんぬいぐるみとか人形とか持ってた。」
彼女はモノと同じ目線になるように屈んだ。すると、モノの方から彼女へすり寄る。まるで、ペットのようだ。私はそのモノが少し可愛らしく見えてきた。
「女の子はいっぱい遊んでくれた。けど、いつからか違うぬいぐるみと一緒にいるようになったの。新品で、見た目も可愛い動物のぬいぐるみ。この子はなんとか自分も可愛くなれないか試したけど、自分の布を切ってしまって前よりもボロボロになっちゃったの。女の子からは余計に遠ざけられてしまった。」
だんだん動きが大きくなってきた。モノは彼女を見ていない。その視線はーーーベッドの上に向けられていた。熊のぬいぐるみだ。10年前、両親が誕生日に買ってくれた大切な。モノがぬいぐるみへ近づこうとしていた。
最初のコメントを投稿しよう!