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わたしの影が、ぐにゃりと動いた。
影はよく見知った姿の形となり、車に駆け出した。
アイツの顔が、恐怖に歪み、ハンドルはわたしとは反対方向にきられ、そして…。
キキィッ…どかんっ!
壁に正面衝突した。
そしてその衝撃で、電柱が折れて、車の上に落ちた。
ガッシャーンッ!
車は見るも無残な姿になる。
影はわたしを飛び散る車の残がいから護るように、大きくなった。
アイツは死んだ。
―わたしの望んだとおりに。
わたしの足は、自然とあの神社に向かっていた。
そして思い出した。
わたしは死んだ犬の体を抱えて、神社に来たのだ。
犬が好きだった場所。
思い出の大切な場所を、血塗れのわたしは訪れた。
そして…彼女と出会った。
犬の骸を抱いて、神社の階段に座っていたところ、彼女はやって来て、わたしに声をかけてきた。
「どうしたの? …あら」
彼女はわたしと犬を見て、察したようだった。
あわれむように、犬の頭を撫でた。
「かわいそうに…。身勝手な人間のせいで…」
「…っと、ずっと一緒にいたのにっ…!」
ボロボロと涙がこぼれた。
悔しくて、悲しくて!
でも無力な自分が1番情けなかった!
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