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彼女はアーイシャのことが聞きたかった。結論が判っているにしても・・・。
しかしアンはこの質問を諦めた。自明のことに僅かな期待を持っても裏切られるしかない。
病室から軍曹が去ると、彼女はひとりアーイシャことを考える。
私は、亡くなった父と母に愛されていたと思う。あの父の背中のぬくもりは、今も記憶の底に懐かしさと共に残っている。
だがアーイシャは、生を宿してから今までの短い歳月、あの父から喜びにあふれる〈ぬくもり〉を受け取ったことがあるのだろうか。
強張り恐怖におののく少女の顔を彼女は思い出す。
アンは自らの頬を流れる一筋のものを感じていた。
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