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夢のきざはし
2017 au Japon
変わり映えのしない日常は、いつもそこにあると思っていた。
何か変わったことでも起きないだろうかと期待することが、どんなに恵まれているのかも気づかずに…。
窓から見える木々はすっかり葉を落とし、凍てつく空に突き刺さるように形骸をさらしている。
枯れてしまったように見える枝には、膨らみがそこここに見られ、やがて芽吹く時を息を殺して待っているようだと霧島まどかは思う。
ー 息を殺して待っている? 生命の復活を? -
何かが頭の隅に引っ掛かり、まどかの胸にチリりと焦りとも不安ともつかないものが走った。
不安に蝕まれそうになって、まどかは慌てて手に持った海外旅行のパンフレットに視線を落とし、意識を集中させようとする。
暖房の効いた大学のカフェテリアでは、並んだクリーム色のテーブルを囲った学生たちが、食事をしたり、レポートを書いたりしていて、時々あがる歓声や笑い声に満ちている。
その一角に陣取ったまどかと双子の友人、水野愛莉と愛羅は、隣接する生協カウンターから海外旅行のパンフレットをもらい、卒業旅行のプランを練っていた。
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