86人が本棚に入れています
本棚に追加
双子の妹の方の愛羅が、めくっていたパンフレットをテーブルに置き、おっとりとした口調でまどかに話しかけた。
「ねぇ、まどかったら、明後日からもう2月なんだよ。いい加減に卒業旅行どこにいくか決めようよ」
妹の意見に賛成と頷き、しっかり者の姉の愛莉が、まどかに意見を求めようとして、ちらりと見てから溜息をついた。
「ああ、無理、無理。パンフレット見て、またいつものトリップ状態になってるわ」
自分のことを言われているとも気が付かず、真っ黒でサラサラのロングヘア―、黒目がちの大きな瞳をパンフレットに彷徨わせていたまどかは、中世の街並みをそっくり残したような写真を見た途端、心にざわめきを感じた。
何だろうこの感じ?ざわざわ不安が掻き立てられるような、それでいて惹きつけられるような・・・・でも、でも・・・。
「う~ん、ここじゃないんだよね。似た場所を知っているような気がするんだけど・・・」
「何か言った?まどか、それどこのパンフレット?」
愛羅が尋ねても、写真に見入っていて返事もしないまどかに代わり、愛莉がパンフレットを読み上げる。
「フランス南西部のペリゴール。人口1万人の街に、年間二百三十万人の観光客が訪れ、街全体が映画の撮影に使われることもある。だって」
最初のコメントを投稿しよう!