夢のきざはし

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「わぁ~いいじゃない!インスタ映えしそう。そういえば去年の夏休みもまどかはフラン・・・」  突然、愛莉にポカッと丸めたパンフレットで頭を叩かれた愛羅は、びくっと肩を竦ませ、しまったというように口を覆った。  目の前で何の脈略もなく愛莉が妹の愛羅を叩いたので、さすがのまどかも不思議に思い、怪訝そうな表情を浮かべて、二人を交互に見つめたが、まどかが口を挟むより先に、愛莉が他のパンフレットを押しつけてくる。 「ねぇ、イタリアとかスペインはどう?こっちも見るものが沢山ありそう。あっ、でも、まどかは漫画の原稿できたの?就職前に一作品仕上げて投稿するって言ってたじゃない」 「なんか二人ともわざとらしくない?何か隠してる?」 「えっ?何も隠してないわよ。ね~愛羅?」 「そ、そ、そう。私はまどかの漫画のファンだから、まどかが漫画家になるのを楽しみにしてるの。で、描けたの?」 「うん。もう仕上げて投稿はしたけれど、想像上のきれいごとばかり並べているように感じて、納得いかないんだ。多分だめ。もっと色々経験して、読者の心に届くような作品を描きたい」  最初は二人の態度に違和感を覚えたまどかも、大好きな漫画のことになるとだんだんと饒舌になり、ただでさえ大きな黒目に力がこもって、きらきらと輝きだした。
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