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僕を含めた十数人の一行はムツミさんの先導で村の神社へ向かった。
神社の入り口は石造りの大きな鳥居がひとつ鎮座しており参道に規則正しく石灯籠がならび灯りが照らし出している。その中をみんなでぞろぞろ歩いて拝殿へ進む。空気が夜闇にピンと張りつめたような感覚を覚えさせ、なにか忘れていることを思い出させようとしていた。
二つ目の鳥居をくぐり拝殿に進み出るころには、僕は頭痛を感じ始めていた。何かを忘れている。そんな思いが沸き立ってどうしようもない。この十数人は同じ場所にいた気がする。拝殿は出雲神社のようなつくりだった。みんなで並んで参拝を行った。
「今日はみなさんに本殿も参拝できるそうです。行きましょう。」
ムツミさんはさらに拝殿の奥の本殿へ僕たちを案内する。本殿は質素に作られていて、全員が外陣に座ると窮屈だった。
「皆さんにご説明します。」
ムツミさんは僕たちのほうを向いて語り始めた。
「この神社の主祭神はイザナミさまです。イザナミさまは黄泉の国の主宰であり、みなさんを誘う神様です。」
無表情な宮司さまが祝詞を上げはじめると、少しずつ頭痛が増し始め、霧のなかにあった記憶が明白になってきた。
「僕はもう死んでいる。」
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