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そうだ。二日前僕は旅の途中路線バスに乗り込んだ。天候は厚い黒い雲が立ち込めていたことを覚えている。
バスが田舎道を走り始めると雨脚は激しくなり始め、バスのワイパーさえ効かない状況だった。そうだ。雨だ。激しい雨が降れば降るほど。窓に打ち付ける雨粒が向こう側の風景をゆがめる。
バスは左右に車体を揺らしながら右手に崖になっている谷の地域に入ってきた。車内は沈黙に包まれ、叩く雨音が緊張感を高めた。
その瞬間のことはおぼろげに覚えている。まずバスの目の前に土砂が崩れてきた。運転手の悲鳴ともつかない声のあと激しい衝撃が遅い座席から投げ出されて床にたたきつけられて転がった。悲鳴があたりを包む。
間髪入れず車体が左から横倒しにされる。土砂が流れ込み僕もほかの乗客も飲まれてゆく、そして激しく回転する車内。僕は記憶を失った。そうなのだバスは土砂崩れに巻き込まれて崖から落ちた。僕は、死んだ。
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