僕はどこまでも歩いた。

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「気が付きましたか?」 ムツミさんの声が聞こえた。   僕は気が動転して、激しい鼓動が襲っている。 「僕は、死んでいる。」 「そうです。あなたは死にました。でも心配はいりません。」 ムツミさんの声は常に冷静だ。 「あなたはイザナミさまに導かれて新たな人生を歩むのです。あなたが最後ですよ。」 あたりを見まわした。さっきまでいた人々が消えている。  本殿の内陣。僕の正面の祭壇が光り輝き道ができている。動機が収まり僕は現実を受け入れる。死んだ。そして今転生を迎えようとしている。僕は光の中に身をゆだねる。その向こう側に何があるのかわからない。僕は光に溶けて意識を失った。 「イザナミさま。黄泉の国の主宰。道敷大神さま。本日の御霊を鎮めたまいませ。」 ムツミさんは誰もいなくった本殿でひとり深く迷える魂に祈った。
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