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 開口一番、絵の催促だ。名前を呼ぶこともなく。 「いえ、まだです」  彩人はエレベーターに入り、書類を抱えながら四階のボタンを押した。六階(撮影スタジオと倉庫)のボタンも点灯している。 「来週中には提出しろよ。企画会議に間に合わなくなる」 「分かってます」  つい不愛想な声になった。彼に対し不満が蓄積しているのだから、仕方ない。  エレベーターが四階に到着した。 「じゃあ俺はここで」  軽く頭を下げて、彩人はさっさとエレベーターを降りた。早歩きで予約を入れている会議室に向かうが、背後から足音がするので、仕方なく止まる。  後ろを振り向けば、やっぱり二階堂が立っている。今日は少し光沢のあるネイビーのスーツを着ている。体にフィットしていて、憎らしくなるほど格好良い。 「なんですか? 二階堂さんは六階に用があるんじゃないですか」  仏頂面を作って言うと、二階堂がムっとしたように眉を寄せた。 「お前こそ何なんだよ、その態度は。不満があるなら言ってみろ」 「ありまくりです。社員にしてくれるって言ったのにバイトにされるし。サンプルの絵だって何回も提出しましたけど」     
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