プロローグ

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「じゃあ、ここに」  彼は一番そばにある二人掛けのテーブルを指さした。向かい側の椅子にビジネスバッグを置き、手前の席に腰を掛けた。  彩人はテーブルに水の入ったグラスとおしぼり、メニューを置いた。  彼は真っ先にメニューを手に取り、ページをパラパラ捲っていく。最後のページにあるケーキセットの欄を凝視しながら、「アイスコーヒーを」と告げてきた。 「はい。かしこまりました」  ――ケーキセットは頼まないのか。  こんなにじっくりケーキセットのイラストを見ているのに。  彩人は厨房に行き、夕食メニューの仕込みをしている店長にオーダーを伝えた。  すぐに店長はカウンターまでやってきて細口ドリップポットでお湯を沸かし、コーヒーを淹れる準備をした。  すぐにお湯は沸いて、店長がペーパードリップでコーヒーを淹れた。アイスコーヒー用だから豆は深煎りだ。深みのある香ばしい匂いが漂ってくる。 彩人は冷蔵庫の製氷機から氷を取り出した。氷をグラスの縁いっぱいまで入れて、カウンターに置く。  店長がサーバーに入ったコーヒーを、グラスに一気に入れる。 「できた」  店長が不愛想に言って、すぐに厨房に戻った。     
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