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可笑しそうに笑いながら、香苗が股を開き、彩人の言う通りにポーズを取ってくれた。
彩人はベッドのすぐ近くに赤い収納スツールを置いて座った。
もろにその部分が露わになっている。だが、彩人は性的興奮を覚えたりはしない。
画用紙に十字線を入れ、中心に恥丘を配置し、腹と太腿の境目、潰れた尻の肉、そして上部の臍、胸部と、大まかな特徴、輪郭を描いていく。教科書通りの描き方はしない。自分の好きな順序で。ただのスケッチだ。
「できた。どう?」
欠伸をしている途中の香苗に、スケッチブックを見せる。
「めちゃリアル。ちょっと恥ずかしいんだけど」
香苗が困ったように笑った。
彩人が描いたページを切り離そうとすると、「ちょっと待って」と彼女が声をあげる。
「なに?」
「どうせなら色も塗ってよ。もっとエロくして」
「別にいいけど」
彩人はスケッチブックを閉じて、帰りの支度をした。
「もう帰っちゃうの?」
名残惜し気な声に、苦笑しながら頷く。
「仕事があるんだ」
デイバッグを背負い寝室から出る。狭いキッチンを通れば、すぐに玄関だ。
「また来なよ」
「ああ」
彼女に背を向けたまま手を振り、彩人は玄関のドアを開けた。
隣の自分の部屋に帰ったあとは、シャワーを浴びて汚れても良い服を着る。
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