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堅実な人生を歩めると思ったのに、誤算が生じた。新卒で雇ってくれた会社が、入社半年で倒産してしまったのだ。すぐに再就職先を探したが、なかなかうまくいかなかった。就職活動が長引いて、家賃が払えなくなりそうになって、彩人は妥協した。借りているアパートの近くのカフェで店員を募集していたのを見かけ、応募した。そして現在に至る。
「何を言ってるんだ。そんなことできるわけないだろう?」
男が困惑したように苦笑する。
「俺はイラストレーターになる気なんてこれっぽっちもないんです。でも、正社員として雇ってくれるなら描きます。いくらでも。もし俺の絵が売れても、著作権がどうの言いませんから」
話しているうちに、どうしてもフェリテで働きたくなった。大手通販会社の正社員――手堅い。
「きみってちょっと――変わってるね」
男が引き攣った笑みを浮かべた。
店に入ってきたときのクールな印象は、見事に剥がれ落ちている。
それが何故かちょっと嬉しくて、彩人はつい笑ってしまった。
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