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更に蜜月
土曜日、遅く起きた朝。
仰向けになって白い天井を見ていると、隣で二階堂が欠伸をする声が聞こえてきた。
「起きた? おはよう」
恋人は無理やり起こすと本気で怒るので、彩人は静かに彼の覚醒を待っていたのだ。
横向きになって、二階堂の頬にキスをして、彼に体を密着させる。今朝は二人とも全裸だった。昨晩は二階堂も休日前ということで緩かったのだ。日が変わってもベッドで行為に耽り、彩人が出さずに達した回数は片手を超えていた。
「おはよう」
まだ眠そうな声。職場では絶対出さないような声だ。自分にだけ聞かせてくれるのが嬉しい。
腰に回ってくる彼の手を避けて、彩人はベッドから上体を起こした。二階堂の脚の間に体を割り入れ、戸惑うことなく股間に顔を埋める。
兆していない彼のものを片手で軽く握り、舌でペロリと舐める。
「こら、何やってる」
二階堂の困った顔を見るのが好きだ。顔を上げ、彼に向かって微笑み、下唇を舐めて見せる。すると、手中の二階堂の輪郭が、確かなものになっていく。
もう一度頭を下げ、いつも彩人を可愛がってくれるそれを舌でくすぐり、口に含み、唇の裏で擦り上げる。と、口の中で恋人のものが逞しく成長した。
彩人は額に浮いた汗を拭った。
まだ今は九月初旬で、夏を引きずった暑さだった。
体を起こし、二階堂の腰に跨る。
己の狭い器官を指で軽く解してから、彩人は一息に腰を落とした。
「っあ……! あ」
恋人の刀身が襞をかき分け、深い場所まで沈み込んでくる。その衝撃と、強い悦楽に、彩人は吐息の悲鳴を上げる。
勝手に前の性器からは蜜が零れ、蕾は忙しなく震えて中のものを締め付けた。
「あ、ん、あ、あ」
二階堂が本気になったみたいだ。下から小刻みに律動を送られ、良い場所を何度も抉られて、彩人はすぐに達してしまう。
深みに到達した二階堂のものも弾けて、彩人の中を熱く濡らした。
セックスが終わってすぐに、二人はバスルームで体を洗った。二階堂が自分の放ったものを指で掻き出し、ついでに体を洗ってくれる。
二階堂の選んだボディソープは柑橘系の良い匂いがした。ぷくっと腫れた乳首をいたずらに指で押され、彩人はお返しに彼の陰毛を引っ張った。
二階堂と暮らし始めて二か月が経ち、こうやって一緒にお風呂に入ったり、ふざけ合ったりすることも増えてきた。
「すき」
惜しむことなく気持ちを伝えることも。
「知ってるよ」
二階堂の少しかすれた美声には、毎回ドキドキしてしまうが。
二階堂が作ってくれる食事はいつも美味しいし、栄養も考えられている。たまにジャンクな物も食べる。
今日は遅く起きたのでブランチだ。テーブルに並んで座って、たまにキスを挟みながらトーストとスクランブルエッグを食べる。
身も心も充足感に包まれている。幸せすぎて怖いぐらいだ。
「一時間後に家を出る。搬入に行ってくるから」
食事のあとに告げられ、彩人は「ありがとう」と返した。
二階堂は嫌な顔をすることなく――いやむしろ嬉しそうに――彩人の絵を外へと運んでくれる。
今日は港区の高級バーに、彩人の絵を持って行く。そのバーは店内に無料で絵を飾るサービスを行っているが、マスターが気に入ったものしか置いてもらえない。彩人の絵は、彼の審美眼に認められたのだ。
「今日は何を描くんだ?」
二階堂が皿を洗いながら聞いてくる。
「コンクール用の絵だよ」
彩人は毎日、最低五時間は絵を描いている。気まぐれに描いたり、コンクール用に描いたり、外部で飾ってもらうために描いたり。色々だ。
もう就職活動は行っていない。
彩人は二階堂に囲われていた。
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