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後藤の店にあるのは、海外から集めたビンテージの雑貨と、メンズ、ウィメンズの服とアクセサリーだ。デザイン性は優れているが、それなりに値段が張る。品質はそこまで良くないのに。
彩人は片付けを始めた。養生シートを巻いてトートバッグに戻す。
「じゃあ今度、飲みに行こうぜ。積もる話もあるしさ。中山たちも呼んで」
――中山。
その名前を聞いたとたん、首に嫌な汗が浮いた。
「中山とはそんな仲良くないし。ずっと連絡取ってないんだ」
彩人はさっさと片付けを終え、デイバッグを背負った。ここに長居する時間はなかった。
「え? そうなの? お前ら大学も同じだったじゃん」
――だから会いたくないんだよ。
「この後用事があるから帰るな」
一方的に言って、彩人は後藤に背を向けた。
「どこ行くんだ? この後」
不満そうな後藤の声に、彩人は振り返ることなく答えた。
「上野動物園」
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