3人が本棚に入れています
本棚に追加
/69ページ
「キャスー! キャスティール! どこにいるの?」
僕は自分の名前を呼ばれ、甘いまどろみから目覚めた。
僕は目深にかぶった麦わら帽子を手に取り、呼び主に向かってゆらゆらと振ってみせた。
空から降り注ぐ柔らかい日差し、背中から伝わる暖かくゆるやかな揺れが、また僕を眠りへと誘おうとする。
「キャスってば、よくそんなところで寝られるわね」
「慣れてみるとすこぶるいい寝心地なんだよ、カナリー」
そう言うと僕は大きな乳用牛の背中から体を起こす。しかし、同時に乳用牛が歩き出したため、見事に大地に全身を叩きつけられる。
「ふふっ、仕事をさぼっているバチが当たったのね」
姉のカナリーが僕の身体中についた牧草を両手で払ってくれる。
「ありがとう、姉さん、自分で出来るから大丈夫」
カナリーは僕たちの両親が神に召されてからというものの、やたらと僕の世話を焼こうとする。僕はもう今日で十二歳になるのに、友だちに見つかったら何を言われるかわからない。
最初のコメントを投稿しよう!