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「ママ~、早くはやくー!」
「わかったから待てってば」
「遅いよぉ~!」
「お前らが早すぎるの!」
ぜえぜえと息を切らせながら、ぴょんぴょん先に行ってしまう我が子を追う。
白く長い耳を揺らした我が子は何度も立ち止まっては振り返り、俺が追いつくとすぐに跳ねて行ってしまう。
「女の、子が、一人で、先に、行く、あぶねぇ、よ」
体力の限界だ、よろよろとその場に座り込んだ。
我が子は先を行く父親に追いついたようで、抱っこしてもらって上機嫌だ。父親――アーロンは子を抱っこしたままこちらへと引き返してきた。
「ママを置いてきちゃダメだって言っただろ?」
「だってママ遅いんだもん」
アーロンは苦笑しながら右腕を伸ばしてきた。俺の腹に腕が回り、そのまま抱き上げられる。
「きゃあ! ママも一緒!」
喜ぶ我が子に、俺もアーロンも頬が緩む。
「さあ、早く帰らねえと日が暮れちまう。誕生日会できねえぞ」
「ケーキ! ママのケーキある?」
「おうよ、気合入れて作ったぞ!」
「やったぁ!」
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