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彼の優しさ、懐の広さに驚いた。
街の外は未だ荒れていて、凶暴な化け物や盗賊がうろついている状況。そんな中、一人で生きていくのは無理だとこの時悟ったのだった。
頭上から寝言が聞こえる。彼は俺をいつも包み込むように抱きしめながら寝るのだが、推測するに、出会ってすぐに逃げ出したことが大変なショックなことで、トラウマになっているようだ。混乱していたとはいえ、悪いことをした。
規則正しく穏やかな寝息を聞きながら、頬に感じる熱にうっとりと息を吐いた。俺もこの時の出来事から、こいつと離れるのが怖くなった。
余談だが、助けられたあと、怒りとショックで理性が切れたアーロンにペロリと美味しく頂かれている。
恐怖による緊張で汗を多くかいていた上に大泣きしたせいで、香りが増幅していたらしい。本能が抑えきれなかったそうだ。やはりフェロモンの一種なのだろう。しばらくケツが痛かったが、思ったより悪くなかった。驚きだった。
ただ、とんでもなく恥ずかしかった。それは今でもだが。
「椋人?」
掠れた低い声が大変セクシーだ。男にそう感じるなんて、自分も大概こいつのことが好きなのだ。
「なんだ、お前も起きたのか?」
包み込まれた腕の中でなんとか伸びあがり、瞼が半開きのアーロンにキスをした。ふわりと香るチョコの甘い香りにクラクラする。
「すまねえ。日付が変わっちまったな」
ぎゅうぎゅうと強く抱きしめられて、ぐえっと声を漏らせばすぐに離してくれた。
「早えなあ。もう三年か。まだまだ足りてねえわ」
「お前はいくらヤっても足りないだろ」
「そりゃそうだ。相手が椋人だから仕方ない」
ぐわりと開いた口が俺の口を塞ぐ。兎といえばあっちの世界では草食動物だったけど、こいつは全然違う。物理的にも食べられそうだ、こわい。
「それだけじゃねえよ。もう俺はお前がいなきゃ無理だからな」
「安心しろ。それは俺もだ、アーロン」
「はは、そうかそうか」
静かに笑い、優しく髪を梳いてくれる。心地よくてゆっくりと目を閉じた。
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