2:落とし穴のその先に

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 見た目にそぐわず甘えん坊で寂しがりな男だ。俺が日本に戻ったら一人では生きられないなんて可愛いことを言う。しかしそれは俺も同じだ。今さら日本に戻れといわれても、番を解消してくれと言われても、もう無理だろう。  そういえばウサギというのはひどく寂しがりで、ほっといたら寂しさで死ぬと聞いたことがある。それはダメだ。こいつを死なせるわけにはいかない。ずっと傍にいてやらないと。  足を絡ませて、ぬくもりを分け与えながら目を閉じる。  出会って三年。まだ俺たちには子供はいない。  未だ恋人のような俺たちだけど、そろそろ本気で考えなければならないだろう。  § § §  夕飯の支度をしながら、ミツキから届いた手紙の内容について考えていた。彼は現在二人目を妊娠中だと教えてくれた。  視線を自分の腹に向ける。平らの、薄っぺらい腹だ。男の彼が妊娠だなんて、想像できない。  この世界での出産は人間とは全く違う。初めて聞いたとき、大変驚いた。  男女関係なく子を産むことができるだけではない、妊娠から出産まで、すべてが違う。  まず男同士の場合、どちらが母親になるか相談する。男女の夫婦であれば日本と同じで女性が基本的に母親になることが多いそうだが、同性の場合はあらかじめ立場をはっきりさせておくのだそうだ。  そして交尾する。オスになる者がメスになる者の体内に射精するのは同じだ。しかし、この次からもまた違う。  射精時に出すものは精液だけではない。卵となる核も排出する。体内で同時に排出し、同時に受精するのだという。  核は一か月後には自然に体外へと排出される。排出された核は日本でもおなじみの卵の形になっており、その卵を二人で孵化させて出産となる。  孵化のさせ方はかなり変わっている。卵を温めるのではなく、定期的に二人の精液をぶっかけてやるのだという。  あぁ、なんて恐ろしい。正直、体力が持ちそうにないと思っている。あいつの性欲はとんでもない。  人間の女性が持つ子宮という器官はどうやらないようで、どの種族でも同じ妊娠、出産なのだという。そして不思議なことに、ハーフであっても必ずどちらかの種族になるのだそうだ。
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