2:落とし穴のその先に

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 人間の出産であれば中学の頃に保健体育の授業で少し習っているのでなんとなくわかるが、こちらは全然わからない。  小さな卵の状態で体から出てくるので出産自体は楽らしいが、正直なところ、未知すぎて怖い。  ミツキという先輩がいるので少しは心強いが、彼もこれを体験したのかと思うと……大変複雑な心境である。  彼は怖くなかったのだろうか。送られてきた手紙にはそのようなことは書かれていたことはなかった。  手紙の返信は書き終えているのだが、彼に相談してみようか。 「お、今日はトンジルか。いいな、大好物だ」  台所に入ってきたアーロンが、鍋を覗いて尻尾をピコピコ揺らした。  獣人は感情がわかりやすい。狼ほどではないが、兎も嬉しい時は尻尾が揺れる。 「ホント好きだよな、和食」 「おう。こんな繊細な味の料理は他にないからな」  目を輝かせながら食卓の皿もチェックしている。野菜をふんだんに使った料理で、どれも和食だ。凝ったものはない。  生、または焼く茹でるといった、おおざっぱな料理が多いので、日本で高校生をやっていた俺が作れる程度の料理でもプロ並みに感じるらしい。 「椋人の料理は俺の作った野菜のおいしさを最大限に引き出してくれている。愛情もたっぷりだしな」 「……おう」  はっきり言われると恥ずかしいもんだ。目線を逸らしながらありがとうと言えば、がははと笑われた。 「ふ、風呂! 風呂入ってこいよ。あとは煮込むだけだから」  手元の鍋のジャガイモがホクホクと湯気を出している。正式にはジャガイモという名前ではないが、見た目も味もジャガイモそのものだ。今日は和食の定番、肉じゃがを作っている。これもアーロンの大好物の一つだった。 「一緒に入るか? あとは煮込むだけだろ?」 「誰が入るか! しばらく寝込んじゃうじゃん!」 「体洗ってやるだけだぞ?」 「お前がそれだけで済んだ試しないだろ!」
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