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空に浮かぶ雲の上の国。地平線の向こうまで広がる地上の砂漠。
故郷を想い、空を見上げ立ち尽くす、砂まみれの甲冑姿の騎士。
進むべき道が見えず、ただただ灼熱の太陽に照らされて、騎士は途方に暮れていた。
脳内に繰り広げられるファンタジーに心弾ませながら、ゆっくりと通学路を歩く。俺は小さいころから空想することが大好きだった。放課後にはよく路地へ飛び込み、小人の街を探していた。
現実と空想の世界の区別がつかないような幼少期を過ごしたせいか、ソレをこの目で見てしまった時、体が震えたのだった。
放課後。住宅街の角を曲がった時に聞こえてきた悲鳴。俺は俯いていた顔をあげ、思わず首を傾げた。
ありえない光景が飛び込んできた。他校の男子生徒がアスファルトに吸い込まれているという、非現実的な光景に、脳が処理しきれず混乱した。
「ど、どうしてこんなところに落とし穴が……っ!」
彼の叫び声に我に返り、慌てて駆け寄ったものの、道路には底の見えない黒い穴。そこから伸びる彼の白い手。
周囲のアスファルトはトプンと、あり得ない程に柔らかく湖面のように波打っていた。
これは現実か妄想か。しかし考える時間はなかった。
彼を助けようと必死に腕を伸ばして――俺は異世界へと飛ばされたのだった。
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