2:落とし穴のその先に

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 なにか不満があったわけではない。未練がないわけでもない。家族や友人らに会いに、元の道を戻りたいとも思う。  別れを告げていないのだ。あまりにも突然のことだったから。  それでも。  傭兵は目を輝かせながらこちらへと手を差し出している。  自信に満ち溢れた、力強い目だ。  自分もそうありたい。願わくば、この男と共に。  騎士は彼の手を取った。  もう後ろは振り向かない。時おり、思い出すくらいでいい。  覚悟を決めてグッと一歩踏み出せば、驚くほど体が軽くなった。  サァ……と、爽やかな風が騎士と傭兵の間を通り抜けていく。砂漠の埃っぽさを吹き飛ばし、甘いチョコの香りが二人の間を漂った。  視界が一転して、鮮やかなものに変わる。 「さぁ行こう。椋人」  目指すは砂漠の向こう。光輝く緑の未来。 了
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