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「んでも、侯爵喫茶は今からが忙しい時間帯だろう? 店長であるラインハルト侯爵様がいなかったら、売上半減すんだろうが」
アニキは『侯爵喫茶店』を経営している。ちなみに本人も『ラインハルト侯爵様』として店で接客業その他をしている。若い頃は雑誌モデルをしていたから、その頃からのファンも多い。モデル業で貯めたお金を元手に企業して、今はかなりの売り上げがある。たびたび、一緒に働かないかと誘いを受けるが丁重にお断りしている。身長も顔立ちも普通レベルの俺にはアニキみたいな侯爵様の恰好は似合わない。色男だった親父に似た彼だからこそできる仕事だからだ。
「そんなこと心配してんのか、おまえは。大丈夫だって。店にはちゃんと告知貼ってあるし。メイドの黒薔薇ちゃんも『侯爵様。どうぞ弟殿下を守ってあげてくださりませ』って笑顔で送り出してくれるし」
「黒薔薇ちゃん……ね」
黒縁眼鏡に金髪ツインテール。おまけにおっぱいが大きいというお店の看板メイドさんを思い出して、俺はうなずいた。
「さて、なにが食べたい? 遠慮なく言ってごらん?」
宮廷衣裳の袖をまくりながら、アニキは歌うように訊いた。これからミュージカルでも始まってしまいそうな勢いがある。
「えー。あー。そうだな。それなら『らーめん』食いたい。できれば出前のやつ」
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