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「出前のらーめん? また、なんで?」
アニキに作らせたくなくて、わざと『出前』という言葉をつけた。しかし、そんなことが理由だとすれば、絶対に出前をとってはくれない。むしろ意地でも作る。この宮廷衣裳の上に割烹着を羽織っている段階で、ゆずらない強い意志を感じるからだ。
「小さいころ、アニキと一緒にばあちゃんちで食っただろう? 俺さ。今、めちゃくちゃ食べたくなったんだよね」
「ほうほう。たしかにな。月に一度の土曜の昼は、たしかに出前だったな。おまえはらーめんにするか、かつ丼にするか悩んで交互にしてたしな」
割烹着を羽織り、くるくるの金色長髪をひとつに縛ったアニキがうんうんと懐かしそうに相槌を打った。
「俺、すっげー好きだったの、出前のらーめん。思い出したら、それ以外食いたくなくなった」
「しかしなあ。出前のらーめんはウマくないだろ? 麺伸びてるし、汁ちょっと冷めてるし」
「それがいいんだよ。ラップをとる瞬間の感動は忘れられない」
アニキの言うとおり、出前のらーめんは決しておいしいとは言い難い。しかし、ラップをあける瞬間のワクワク感はなんともいえないのだ。
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