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侯爵様は弟思い
ラインハルト侯爵様の恰好の上に、白い割烹着を羽織り出て行ったアニキを待つこと一時間。マンションの呼び鈴が鳴った。
一応、人様の家である。いくら身内だからと言っても勝手に冷蔵庫の中を物色するわけにもいかず、ただひたすらに空腹に耐えていた俺。仕方なし、呼び鈴に重い腰を上げた。
玄関モニターにはラインハルト侯爵様姿のアニキが映っている。
「えっと……なんで鍵開けて入ってこないわけ?」
モニター画面のアニキに質問する。彼はモニターに笑顔を向けて「手が離せないんだよね。早く開けてくれ」と訴えた。
「はあ……そう」
一体、一時間も外でなにをやっていたのだろう。出前のらーめんでも探しに行っていたのだろうか? アニキならやりかねない。
モニター画面のすぐそばにある鍵を開けるボタンを押す。これでエントランスの自動ドアは開く。
数分後、また呼び鈴が鳴る。今度は部屋の玄関だ。
「へいへい……」
俺は再び重い腰を上げて玄関に向かった。ゆっくりと扉を開けると、立っていたのはアニキだった。そりゃそうだ。さっき確認したんだもの。
「お待ちどうさまでした!」
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