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「おうっ! 冷めないうちに早く食え! って言っても、おそらくもう、ぬるくなってるけどな。外の風、冷たかったし」
よくよくアニキの顔を見る。頬が赤くなっている。指先に視線をずらすと、こちらも同じように真っ赤になっていた。冷たい風にめちゃくちゃ当たったと言わんばかりの赤さである。
「おいっ! 早く食べろって!」
「そ……そうだね」
いそいそとラップに手をかける。ゆっくり端から開けていくと、小さな隙間から一気に白い湯気が雪崩のように飛び出してくる。少しずつ湯気が晴れてくると、姿を見せたナルト、しなちく、焼き豚が透きとおる汁の表面にちらばる宝石のようにきらめいて見えた。
「おおっ!」
この一瞬に心が震えた。
急いで箸を割り、麺をすする。
「どうだ?」
アニキの顔を見る。眉間に深いしわが刻まれている。とても心配そうだ。
「伸びてるね」
俺の素直な感想に彼は表情を崩した。腹を抱えて笑う。
「だよな。固めに茹でたつもりだったけど、やっぱりそうなるよな」
続けて汁を飲む。アツアツとは言い難い。
「ぬるいだろう?」
「うん。でも、それがいいんだよ」
「そっか……しっかし、やっぱりウマくないな」
アニキは一口すすっては眉間にしわを寄せている。
「そうかな? 俺は世界一だと思うよ。それにこれ、いまアニキが作って来てくれたんだろ?」
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