第三話 少女の話

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『私はその国で生まれたの。でもね、お父さんもお母さんも私をみていつもこう言う・・・『避妊に失敗してできた邪魔者』って』 少女の顔にまた涙が浮かんだ 『機嫌が悪い時はいつも私を殴って、でも他の人が家に来た時は綺麗な服を着せて『自慢の娘』と媚を売る。そしてそれにも飽きたのか、私を奴隷商人に売り渡した・・・。そこでたくさんの異国民の人たちに出会ったの。』 重い話だが、まず親がダメな奴であることがわかる。少なくともおっさんの両親は笑顔でおっさんの成長を見守ってくれた。 『異国民はみんな何の罪もない普通の人、それなのに首輪と手錠をかけられて貴族に買われていく・・・。私もある貴族のオモチャとして買われた・・・暴力を拒否したら汚い鶏舎に閉じ込められて、剣で切りつけられて、裸にされて、犯されて・・・』 少女の顔は涙で濡れていた。誰にも話せなかったのだろう、話せる人がいなかったのだろう、ずっとせき止められていた思いが一気に噴出して来たらしく、彼女は黙ることなく、自分の過去について話し続ける。その話の中に、楽しい思い出は一つも無かった。おっさんはそれを黙って聞いた。 『そして、その貴族の屋敷から抜け出して、国をでて、あの森で自殺しようとしていたの・・・』 『・・・』 何も言えなかった。おっさんは確かに鈍いが、これほどまでに酷い人生を送って来た人間をみると、流石に同情する。しかし、自殺か・・・。おっさんに止める権利はない。このまま生きてもまた苦労の繰り返しだろう。だが、本当にこのまま死なせても良いのだろうか?いまここには彼女だけではなく、おっさんがいる。酒のつまみとはいえ、サラミやチーズ、そして数本の飲料水ボトルもある。食料が尽きる前に、とにかく国に行かなくては、何もできずに野垂れ死ぬ。しかし、国に安全に入る方法は一つしかない。 『じゃあ、商人になるためにはどうすればいいんだ?』 国に入るには商人になるしかない、しかし、日本でも物を売る時はきちんとした許可証や証明書が必要である。この世界でもおなじだ_ 『売る商品さえあれば・・・商品の何割かを交換で国に入る許可証をもらえる。でも、何も持っていない人は、自分を売らないと入れない・・・これはどこの国でも同じ・・・』 『へ?』 あまりにも簡単だったのでおっさんはちょっと驚いた。
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