3人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
上腕二頭筋姫
魔境をかいくぐり、何度も死にかけながら、ようやく魔王の城にたどり着いた俺は、死闘の末に姫を取り返すことができた。
噂通りとても綺麗な姫は、「ありがとう勇者様、わたしはあなたの妻」と言って抱き着いて来た。至福。ウエスト細い。いい匂い。ふくふくっと膨らんだお胸の感触。
俺はその時うっすらと気づいたが、敢えて忘れたのかもしれない。自分の中で自動的にいらない情報は消去される。その情報いらん。
姫はかよわくはかなげで、俺がついていてやらねばならない。一生守ってやるのだ。
お城まで連れて帰らねばならぬ。
お姫様だっこをしながらダンジョンを通り抜ける。とうぜん、敵の残党が現れて襲って来る。
お姫様に指一本触れさせるわけには。
俺は片手で姫を抱き、片手で応戦する。もちろん不利なのでだいたい、ボッコにされた。顔なんか殴られ放題だ。
「ぼいんぼいぼいん」
と、スライム野郎が生意気にもぶち当たってくる。姫に当たらないよう顔面を突き出して盾にする。あいつら意外に硬い。
足場の悪いダンジョンの中、お姫様を歩かせるわけにはいかない。べちゃべちゃの沼の中、俺は姫を抱きかかえながら歩く。
最初のコメントを投稿しよう!