地球イチ安全な男①

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 怒鳴る俺の両肩にオヤジが手を置いた。 「お…な、なんだよ…?」 「零士…イッツザタイムだ…」 「…は?」  お袋が親父の肩にそっと手を置いた。そのお袋の方に兄貴もそっと手を…。何の儀式だこれは…? 「とうとうこの時が来てしまった…。零士にはショックかも知れんが本当のことを知るその時だ…」 「本当の…?え?まさか…『お前は俺の子じゃあない』という感じか?そういうのは特に大丈夫だけど…じゃあ俺の本当の親父って誰なんだよ?まさか…お袋!隣の根鳥さんじゃ…!」 「ばかやろう…落ち着け…お前は正真正銘俺の子なんだ…なんだが…なんて言うか…」  オヤジは言いづらそうにお袋の顔を見た。 「そう…確かにお父さんと私の子なのよ…。なのになぜかしらね…零ちゃんだけは違って…」  そういうと全員が悲しそうな顔で俺を見つめてきた。無性に悔しくなった。 「わけわからん!ていうかなんか世界が大変なんだろ?俺ン家のみんなの脳みそも大変なのかよ?」 「大変なのはお前だ、零士…」  兄貴がため息混じりに言った。 「いいか、父さんたちは言い難いみたいだから俺から言うぞ?お前には無いんだ…」 「…?」 「無いんだ…」 「いや、分かったよ!無いんだろ?だから何がだよ?そりゃあ学力は…」 「そんなこっちゃない。もっと大切な…基本的と言うか…ふつうあるはずのが…無いんだ…。そのせいでこの重大事にお前は…」  三人同時に溜息を吐きやがった。俺は奥歯が痛くなるほど歯軋りした。 「分からないって!一体何の話して…」  不意にオヤジが俺から離れ、両腕をクロスさせて「はぁぁ…」と呼吸を整え始めた。 「何してんだ?オヤジ…」 「はぁぁ…!りゃぁぁ!」  妙な掛け声とともにオヤジの体から眩い光が迸った。 「うわあ!ま、眩しい!」  一瞬眩んだ目をこすりながらどうにか開けると、目の前にそれが居た。 「…」 「零士、俺は…」 「…待った…。ハロウィンか?今日『も』?この間終わったばっかだよな?オヤジの恰好は…」  オヤジは片手を腰に当て、もう片方の手を胸に水平に当てていたが注目すべきは「どんな姿勢で」ではなかった。服装だ。さっきまでリーマンの戦闘服――くたびれたスーツだったのが、いつの間にか目の前に立つオヤジは全身を銀色の、それも肌の様にピッチリとした奇妙な服に身を包んでいたのだ。胸の中央にはガラスのような半球が付いていた。
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