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怒鳴る俺の両肩にオヤジが手を置いた。
「お…な、なんだよ…?」
「零士…イッツザタイムだ…」
「…は?」
お袋が親父の肩にそっと手を置いた。そのお袋の方に兄貴もそっと手を…。何の儀式だこれは…?
「とうとうこの時が来てしまった…。零士にはショックかも知れんが本当のことを知るその時だ…」
「本当の…?え?まさか…『お前は俺の子じゃあない』という感じか?そういうのは特に大丈夫だけど…じゃあ俺の本当の親父って誰なんだよ?まさか…お袋!隣の根鳥さんじゃ…!」
「ばかやろう…落ち着け…お前は正真正銘俺の子なんだ…なんだが…なんて言うか…」
オヤジは言いづらそうにお袋の顔を見た。
「そう…確かにお父さんと私の子なのよ…。なのになぜかしらね…零ちゃんだけは違って…」
そういうと全員が悲しそうな顔で俺を見つめてきた。無性に悔しくなった。
「わけわからん!ていうかなんか世界が大変なんだろ?俺ン家のみんなの脳みそも大変なのかよ?」
「大変なのはお前だ、零士…」
兄貴がため息混じりに言った。
「いいか、父さんたちは言い難いみたいだから俺から言うぞ?お前には無いんだ…」
「…?」
「無いんだ…」
「いや、分かったよ!無いんだろ?だから何がだよ?そりゃあ学力は…」
「そんなこっちゃない。もっと大切な…基本的と言うか…ふつうあるはずのが…無いんだ…。そのせいでこの重大事にお前は…」
三人同時に溜息を吐きやがった。俺は奥歯が痛くなるほど歯軋りした。
「分からないって!一体何の話して…」
不意にオヤジが俺から離れ、両腕をクロスさせて「はぁぁ…」と呼吸を整え始めた。
「何してんだ?オヤジ…」
「はぁぁ…!りゃぁぁ!」
妙な掛け声とともにオヤジの体から眩い光が迸った。
「うわあ!ま、眩しい!」
一瞬眩んだ目をこすりながらどうにか開けると、目の前にそれが居た。
「…」
「零士、俺は…」
「…待った…。ハロウィンか?今日『も』?この間終わったばっかだよな?オヤジの恰好は…」
オヤジは片手を腰に当て、もう片方の手を胸に水平に当てていたが注目すべきは「どんな姿勢で」ではなかった。服装だ。さっきまでリーマンの戦闘服――くたびれたスーツだったのが、いつの間にか目の前に立つオヤジは全身を銀色の、それも肌の様にピッチリとした奇妙な服に身を包んでいたのだ。胸の中央にはガラスのような半球が付いていた。
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