地球イチ安全な男①

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「オヤ…」 「そうだ…今まで隠していたがこうなっては、な…」 「いや…」 「お前にはショックだろう…」 「…それは…まあある意味…まさかオヤジが…コスプレイヤー…」 「そうじゃない!見るんだ、零士!」  そう叫んだ兄貴も激しい光を迸らせた。そして光の中から現れたのは、全身銀色の――。オヤジと同じ格好の兄貴だった。 「…親子で…コス…」 「ちがうの!零ちゃん見て!」  そう叫んだお袋も…以下同文。その光の中から現れたお袋を見て俺は酷く狼狽した。 「お…おふく…ろ、その恰好…」  齢の割にはまだイケてるでしょ?などとふざけ、風呂上がりの薄着で俺の前をうろうろするお袋。そのお袋が銀色のピッチリとした何かで身を包み、腰に手を当て、もう片手を後ろ頭にもっていって微笑んでいた。 「お…」 「零ちゃん!」 「おえー…」 「零士!現実を受け入れるんだ!分かるか?お前だけ無いと言った言葉の意味…」  オヤジが悲痛な声で言った。分かった。確かに俺のクローゼットには無い。このコスチュームは。 「そうか…その表情ではまだ理解していないな?なら、あれを見ろ!」  オヤジが指さしたのはテレビだった。振り返ってテレビを見ると、画面に奇妙なものが映っていた。それは各都市から送られてくる中継だったが、どの空にも巨大な宇宙船が浮かび、奇怪な光線で地上を攻撃している様子が捉えられている。だがそれはさっきも見た。異様なものはそれではなかった。 「なんだ…あれ…」  『彼ら』は空を飛んでいた。何千…いや何万という『銀色のピッチリとした(以下省略)』な人間たちが空を自在に飛び、手から何か光線のようなものを出して巨大宇宙船と戦っているのだ。 「お前には衝撃だろう…。なにせお前だけこの力を持たずに生まれてきたんだからな…。この、七十億人も住む地球にただ一人、スーパーヒーローの力を持たずに…」 「え…」  俺は改めて画面を見た。子供が飛んでいる。目からビームを出す者。指先から衝撃波を出す者。口から炎を吐く者。オシャブリを咥えた赤ん坊がオシメから…。 「こ…これは…」
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