第三章

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「キャー!」 ギャラリーからあがる悲鳴。 「ウソでしょう、ちょっとヤメテ!」 杏蜜も止めようと声をかけるが、当然ふたりは止まらない。 シルバーメッシュが振りかぶった拳に合わせて、リューイチもまた己の拳を繰り出した。 次の瞬間には、バチンと左右に弾けるふたりの位置。 リューイチは、 「――チッ」 その端正な顔に似合わない舌打ちをして、何かをペッと吐き出す。 ――赤い塊。 震え上がる思いで見ている杏蜜に、シルバーメッシュはニヤリと笑ってみせるが、その頬にも見る間に一筋の線が浮かび上がり液体が滴り落ちる。 「……やりやがったな」 呟くシルバーメッシュに、リューイチは、指先を拳銃の形に作ってふっと息を吹きかける。 そのリューイチの爪が、異様なくらい長い。 まるで人外のモノみたいに、異常に細く鋭い爪。 シルバーメッシュも――、 あげた唇の端から、ニュウッと白い牙を覗かせた。 「……もういい。死ねよテメェ」 見るも恐ろしい形相に変わっている。 このふたり、一体なにもの!? その時――。
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