第四章

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その音に、厄神はハッと我に返る。 リューイチを押しのけるようにして前に出た。 「オレが行く」 リューイチは眉をひそめる。 「いっただろう。おまえではみみこにかなわない」 「かなわなくてもいい!」 怒鳴るように告げた厄神の言葉に、リューイチも杏蜜もハッとする。 厄神はそんな杏蜜を切なげに見つめて、 「杏蜜と共にいられないなら、オレの存在なんていらねぇんだ」 「そんな!」 リューイチも、 「まて!」 手を伸ばすが、その手をすり抜けてジルバーメッシュは飛び出した。 みみこに向かって。 そしてみみこの口に、 ――ズボッ!―― 自分の拳を突っ込むと、 「もっもっもっもっもっ」 みみこの咀嚼と一緒に、その姿が飲み込まれる。 まるでかき消したようにいなくなった。
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