17人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
女が拾得物横領を企んでいるとなると、さすがに協力してやるわけにはいかない。
杏蜜は仕方なくサイフから千円札を引っ張り出すと、
「これ、どうぞ」
差し出した。
正月からあまりに哀れな女の様子に、とても見ていられなかった。
すると女は、
「えっ、いいのっ!」
目にもとまらぬ早さで、シャッと千円札をひったくった。
杏蜜の手をひっかく勢いである。
女は千円札をクシャクシャにする力で握りしめると、
「もう返さないわよ、返せったって絶対ダメなんだから」
誰も取らないのに、鼻息を荒くする。
最初のコメントを投稿しよう!