第二章

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女が拾得物横領を企んでいるとなると、さすがに協力してやるわけにはいかない。 杏蜜は仕方なくサイフから千円札を引っ張り出すと、 「これ、どうぞ」 差し出した。 正月からあまりに哀れな女の様子に、とても見ていられなかった。 すると女は、 「えっ、いいのっ!」 目にもとまらぬ早さで、シャッと千円札をひったくった。 杏蜜の手をひっかく勢いである。 女は千円札をクシャクシャにする力で握りしめると、 「もう返さないわよ、返せったって絶対ダメなんだから」 誰も取らないのに、鼻息を荒くする。
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