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サリーのおかげでいい買い物も出来たし、後は物が届くのを待つだけね。
不意に洋服店のガラス越しに自分の姿が目に入る。
お屋敷でも見て来たのだけど、普段エレノアが着ている色は赤や黒に金の刺繍を散りばめた豪華なドレスばかりだ。
今、私が着ている服でも町娘には見えず、やはりいいとこのお嬢様風なのだろう。
ジルバさんの素材店も確かに上品な感じがしていたし、もう少し下町の事を知るためには…
サリー「いけません。エレノア様ともあろう方が、下町に行くだなんて…奥様が知ったらお怒りになります」
エレノア「私、声に出していた?」
サリーは盛大にため息をつくと私を見て言った。
サリー「アルカンレティアは貴族と民の街ですが貧富の差があります。
…生れながらにして人は平等ではないのです、治安の悪い区域もありますし、市民の中には貴族をよく思っていない者もいます。
その様な場所に私がエレノア様をご案内するはずもありません。」
エレノア「うう…そう言われてしまうと弱いわね…」
ヒロインとしてゲームをしている時にはあまり気にはしていなかったけどこの都市には貴族と平民が住んでおり、
あまり仲がよろしくない。
主人公が平民だったけど特例で優等生みたいな設定だったし、学校に通う様になり騎士様や皇子様と知り合う様になる。
エレノア「サリー、学校はどうなっているの?」
サリー「ルーグス学園は入学前の準備中ですよ。
お嬢様の寮生活のお支度は済んでいますが、まだ3週間もありますので…」
エレノア「…」
ということは、ストーリーは全然進んでいないしヒロインもまだ登場はしていないという事ね。
これは、急がなくちゃいけな…
「わあああああ!!!」
振り返ると、少し離れた通りに人が集まっている。
中央を囲む様にして集まる人々の様子からして何か催し物でもある様だ。
エレノア「サリー、あれはなあに?」
サリー「旅芸人による寸劇ですよ、お嬢様…
……今日は、どうやらマスカレードをやるそうです。」
エレノア「よくわかんないけど面白そう!
行きましょう?サリーっ」
私はサリーの手を引いて人の集まるその場所へと進む。
中央には男性と女性が美しく着飾って互いに顔を隠す様に目にマスクをしている。
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