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結局のところ、医者の診察では特に外傷はないので一時的な記憶の混乱だと告げられた。
暫く安静にと言われた翌日。
サリー「お帰り下さい」
サリーのピシャリとした強張った声が聞こえた。
何事かと銀の長い髪を手近なリボンで一つにまとめ上着を羽織ると寝間着のまま、扉を開けた。
エレノア「サリー?どうしたの?」
サリー「…!…エレノア様…」
視線の先には男の人が二人いる。
攻略対象キャラで、この国の王太子殿下リチャード皇子。
金髪碧眼、誰もが惹かれる美貌の持ち主でザ☆皇子様なリチャード様だ。
白い皇子の服が今日もよくお似合いでエレノアの婚約者でもある。
そしてリチャード様の側仕えで近衛兵隊長のユーステス様。
爽やかで物腰柔らかな紳士的。茶色の短髪で瞳はブルーというお兄さん的存在の面倒見のいいキャラだ。
リチャード「…何だ、元気そうじゃないか。
ああ…やはり倒れたのも私の気を引く下手な芝居だったのか?エレノア。」
んん?
なんだか、言葉の端に棘があるような?
うーん、私がやっていたゲームの中ではエレノアが倒れるシーンはなかったのよねえ…。
まあ、ヒロインではないから当然なんだけど…。
取り敢えずリチャード様の様子を探ってみないといけないし、下手な選択は命が危ない気がする。
サリー「エレノア様には今は休養が必要です。
皇子殿下…」
エレノア「いいのよ、サリー。
リチャード様、お忙しい中我が家に足を運んで頂きありがとうございます。
このような見苦しい格好で出迎えた事、どうかお許し下さい。」
私は丁寧にゆっくりとお辞儀をする。
人に嫌味を言われるのなんて慣れている、取り繕う笑顔なんて朝飯前だ。
リチャード「ハッ…」
リチャード様は本来優しくて、明るい方のはずなんだけどこうも態度が違うということはエレノアに対して何か怒っているということよね。
ヒロイン関連じゃなければいいのだけど…
ユーステス「…こちらこそ連絡せず
いきなりの訪問失礼致しました、エレノア様。
今回は…その…」
ユーステスがちらりとリチャードを見る。
言いにくい事、となるとつまりは一つだ。
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