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亮太は、白髪混じりの角刈りをガシガシやりながら話を続けた。
その様子から、畏まった場所は苦手らしい。
舜一は、義父の昔馴染みなら、この人も総刺青だろうか? などと思っていた。
総刺青疑惑の渋い人は、舜一に語りかける。
「マサさんから君の事は聞いていたよ。アイツは無愛想で、ああ見えて照れ屋だから、付き合いは大変だったろう? だけど、『俺にも家族ができたんだ!』なんて、凄く喜んでいた。代わりに礼を言うよ。ありがとう」
舜一は、一番聞きたくない話を聞かされた。泣きそうなのを堪え、その場を離れる。
そして、棺の前から離れない母に近付いた。
母と一緒に棺へ向かって手を合わせた。
「お父さん、ごめんなさい」
舜一は、安易に人の死を望んだ愚かさに、つくづく嫌気がさしていた。
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