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舜一たちは、人気のない場所を探し、音楽室へ入った。
ベートーベンに睨まれながら、話の続きをする。
「とにかく落ち着こう。バットマンが実在するとは限らない。あの事件だって、偶然も有り得る。いや、そう考えた方が自然だろう?」
舜一の意見を、勇治は否定する。
「舜一も綾香も他人事だろ。俺は、いつ襲われるか気が気じゃない。この一秒後に頭を割られるかも知れない。美咲も政さんも頭を割られたんだぞ! 二人に俺の気持ちが解るかよ!」
勇治は、感情的に叫ぶ。精神的にかなり追い詰められているようで、血色が悪く、唇が紫色だった。
目を見開き、瞬きの回数が少ない。
死に取り憑かれたかのように、異常な状態だった。時計の針が動く度に、ビクビクしている。
「何か対策を考えないと」
綾香の建設的な意見を受けて、舜一も勇治も知恵を絞る。
「舜一の伯父さんに相談してみる?」
舜一は、勇治の提案に乗り気になれない。
伯父は刑事をしているが、バットマンの話を信じるとは思えなかった。
それに、協力を頼むには罪の告白をしなければならない。
成政を死に追いやった顛末の説明が必要だった。
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