鬼人、走る!

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 何だか奇抜な感じだが、そうでもない。この村の子供は、夜に牛ガエルを捕ったりする。  懐中電灯で照らすと、カエルの目が光るから、そこを(もり)で突くのだ。  その時、懐中電灯を手で持つと邪魔になるから、頭に固定する。  今回、豊雄が獲物にするのはカエルでは無い。  だから、首からもランタンをぶら下げ、光量をアップした。  下から照らされた青白い顔が、異様なほど不気味だった。  豊雄が犯行を計画したのは、ある人物の影響だった。その人物は、山を散策中に出くわした。  数年前、豊雄が裏山を歩いていると、獣道の真ん中に人が居る事に気付いた。しかも、彼女は鍋で何かを煮ていた。そう、不審な人物は女性で、年齢は若い様でもあり、年寄りの様でもあった。彼女は、長い黒髪を垂らし、顔色が悪い。体つきは細く、鶏ガラのようだった。指が節だった小枝のようで、鍋の中身をクルクル回す。煮えたぎる鍋はアルマイト製で、七輪の上に置かれている。  グツグツ、グツグツ。  鍋の中身をクルクル回す。その女の狂気の目が、その日以来、豊雄の心を狂わせていた。  さて、彼は、この日のために購入しておいたM1カービン(自動式ライフル)を持つと、蔵を出た。
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