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豊雄は、まずは自宅に入り、居間でうたた寝をしていた祖母の首を切り落とした。
人が首を切られると、一升もの血が溢れ出す。畳は血の海と化し、むせるような匂いが充満した。
鮮血が飛び散り、豊雄も返り血を浴びる。
惨殺された祖母は、眠っていたため、その顔は割と安らかだった。
豊雄の家族は、この祖母だけだった。
その時、豊雄は部屋が異様に暖かい事に気が付いた。原因は、すぐに判明する。七輪で鍋を煮立てる女がいた。
女は、白目の部分が大きいが、瞳は小豆ほどもない。見るものを狂わせる鬼気とした目に、豊雄の心拍数が上がる。
女が、鍋の中身をクルクル回す。鍋には、数匹の犬の頭が入っていた。どれも、目に生気がなく、半開きの口からは、舌がだらしなく垂れている。その中の一匹は目玉が飛び出し、振り子の様に揺れていた。
彼女は、絶えず現れる悪夢だった。
「穢れた犬どもを使い、穢れた人間を滅ぼせぇ! お前は、何度でもこの世に復活し、その度に強くなるぅ」
女は、暗示をかけるように繰り返し唱えた。
女の声に導かれた凶行は、まだこれからだった。
豊雄は、隣の家に押し入ると、いきなり銃をぶっ放した。
隣の家は家族四人で、ちょうど楽しい晩御飯の最中だった。
当時の村では鍵をかける習慣が無かったので、侵入は簡単だった。
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