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虎男の家から悲鳴が聞こえる。
近所の数件が異常に気が付いた。
五六人で様子を見に行くと、虎男の家に火の手が上がっていた。
「茂! 急いでみんなに知らせて来い」
茂と呼ばれた男が、慌てて走り出そうとする。
その時、一発の銃声がした。
背中の肉が弾け、二三歩前に飛ばされた。
「茂!」
次の銃声は、すぐに来た。
一人が、喉を押さえて地面をのた打ち回る。その姿は、水揚げされた小海老のようだった。
パン、パン、パン、パン
連続射撃が、次々と村人を撃ち倒した。
被害者の中で、肩を撃たれた成雅は、撃った犯人を見る事ができた。
犯人は、彼等から三十歩ほど離れた便所から出て来た。
虎男の家は、中に便所が無く、外に汲み取り式の物があった。
その小屋から、犯人は出て来たのだ。
「豊雄か…」
成雅は、死んだふりをしながら確認した。
豊雄は、彼の前を異様な雰囲気で通り過ぎた。
その後、悲鳴と銃声が暫く絶えなかった。
豊雄が、次々と民家を襲ったのだった。
村で大惨事が起きていた頃、少し離れた民家に一人の少女がいた。
名前を節子と言う。
彼女の両親は、今日は親類の所に行っていて、留守にしていた。
家には彼女しかいない。
事件は、ちょうど節子が寝ついた頃に起きた。
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