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アサクラの手は思ったとおりねっとりと濡れていて、死体でも唾が出るんだとどうでもいいことが気になった。
アサクラは握手をした後手を離すと、ハンカチで丁寧に拭いていた。
順番がおかしいがとても突っ込める感じでは無い。
そもそも、私とアサクラは友達ではないのだ。
多分、会社の上司と部下の様なものなのだろう。
冗談を言い合ったりするような間柄を前提としている様には思えない。
「それで、私はこれを覚えて、どうすればいいの?」
死体が動くというありえない事実は認めるし、それに対する才能とやらがあると言われればあるのかも知れないけれど、それよりもなによりも、それを習得して何のために使うのかが分らなかった。
「どうもしないさ。これを扱って、ここで戦って勝ったり負けたりを繰り返してのたれ死ぬだけだ。」
当たり前のことを話すみたいにアサクラは言う。
アサクラの言った内容も、それを当たり前に言うことも理解できなかった。
私が変に思っていることをアサクラも気が付いていた様だった。
「まあ、そのうち慣れるさ。」
アサクラは、じゃあ君の吸血鬼に会わせてあげようと言ってこちらをじいっと見た。
それは何かを確認するみたいで嫌な予感がした。
私が死体を使うとして一番嫌な事。それは、すぐに思いついた。
「まさか、両親の遺体じゃないですよね。」
「さすがにそれはない。まあ、だけどうち以外に売り飛ばされてないとはいえないけど。」
あの二人でなければそれでいい。
多分それよりは他の誰であっても大分マシだ。
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