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リコ
両親が死んだと聞かされたとき、正直少しだけほっとしてしまった。
その位、私の両親は滅茶苦茶な人たちだった。
交通事故だった。状況はよくわからなかったが私の両親には過失があったらしく、自動車保険金も禄に下りなかった。そう親戚のおじさんは言っていた。
◆
「君は運が良いねえ。五万人に一人の才能だよ。」
そんな自分を引き取ろうなんていう親戚は誰もいなかった。
どこの施設に入れるかで揉めに揉めているときその男は私の元に現れたのだ。
真っ黒いコートが印象的だったのは覚えている。
それを脱ぎもせずこちらに近づいた男は私の顔を見るなりにやりと笑った。
それから私に運が良いと言った。
結局運が良かったのかは分からない。
「この子を引き取りたいのだが。
勿論礼金は弾むつもりだ。」
大仰な手振りまで添えて親戚にその男は言う。演技がかってはいたが恐らく礼金は言葉通り弾んだのだろう。めでたくでは全くないが、私はその男に売られた。
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