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学校の制服は間に合わないから。
確かに男はそう言っていた。だから、何処かの学校なのか養成所なのかに入れられると思ったのだ。
自分の才能とやらが何にあるのかは良く分からなかったが何か手に職がつけられるのだろうと思っていた。
別に見目が良い訳ではないから、そういう心配もあまりしていなかった。
実際つれられてきたのは国内とはいえ南の島で、学校もなにもない巨大な廃墟の様な場所だった。
昔この島だか隣の島だかに軍の施設があったらしい。その位の知識しかなく連れてこられたと伝えると、私の教育係に指名された男はゲラゲラと笑った。
ひょろりとした長身の男は「ごめんねえ。」と軽い調子で手を振った。
筋張った手首は真っ白で、着ている真っ黒なジャケットが似合っている様に見えた。
「君のその制服似合っているから残念だ。」
目を細めて、アサクラと名乗った男は言う。
まるでからかっているみたいだ。
だから、男が次に言ったことも冗談だと思った。
「君は吸血鬼を扱う仕事をするんだよ。」
話のオチはまだかとマジマジと見てしまった私と目のあったアサクラは、私を買った男と同じようにニヤリと笑った。
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