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じゃあ、吸血鬼を見せてあげよう。
男は立ち上がると私を別室に案内してくれた。
そこにあったのはゴシックホラーでよく見る様な真っ黒な棺だった。
棺を開けるとそこにあったのは、どう見ても人間の死体だった。
両親の葬儀では遺体の損傷が激しかったらしく棺は開けられる事は無かった。
身元の確認も恐らく親戚の誰かがしたのだろう。だから、これが始めて見る人の死体だった。
最初に思ったのは、ここが宗教施設じゃないかってことだった。
それであれば黒い服を着ていることにも、男が言っているおかしな事も説明はつく。
理由は分からないけれど、入信した信徒として扱われているのであれば。
けれど、そんな生活はゴメンだった。
「あれぇ、なんか勘違いしているみたいだね。」
恐らく私が、怪訝な顔をしてしまっていたのだろう。
アサクラは気にしたそぶりは無い。私が逃げられないと分かっているからだろうか。
「何はともあれ、実演をしてあげよう。」
アサクラはにやりと笑ってから紙切れを取り出した。
「これを体に貼って、ちょいちょいーっとやると。」
さあ起きろ。アサクラは私に話すみたいな胡散臭い話し方ではなく機械的に声を発した。
ガタン。
棺が大きく揺れた気がした。
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