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私にあてがわれた死体は若い男の物だった。
最初は戸惑った。体を清めるのも髪の毛を整えるのも、死体一人ではできなかったからだ。
けれど、それがアサクラの親切だったことはその後分かった。
女の死体と未成年の女の組み合わせでできる事なんか限られているのだ。
私が、吸血鬼を扱う最初はこんな感じだった。
学校と呼ぶには小規模な雑居ビルに数十人の生徒が集められて簡単な勉強とそれから吸血鬼の扱い方を勉強する。
受け取った制服はほかの人間と同じように真っ黒なローウェストの制服はアサクラの言ったとおり可愛かった。
私に似合っているのかは別としてアサクラに見せたいと思ったが連絡先も知らないし、顔を合わせる事も無い。
生活はあてがわれたワンルームでほぼ学校との往復だけで一日が過ぎて行く上頼れそうな大人もいなかった。
だからアサクラと再び合えたのは、この街のことをそれなりに覚えた一年後だった。
「やあ、随分道士らしくなったみたいだねえ?」
「残念ながら。」
アサクラはあまり変わりばえのしない様子で私に話しかけた。
けれど、彼の右手が無くなっているのはすぐに分かる。
「他で生きるより幾分かマシだったかい?」
「はい。」
アサクラは満足げにニヤリと笑うと「これからは仕事のパートナーだよぅ。」と言った。
最初からその予定だったのか、そうでなかったのかは知らない。
だけど、それが一番マシな選択なのだろうと思って「よろしくお願いします。」と笑顔を浮かべた。
了
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