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雄蔵が宗道を打ち負かしてから三日。
中野泰宗の屋敷には続々と佐竹広臣の家臣団が続々と集まってきた。
「雪様、お久しゅう。その横の男は?」
「こちらは立花雄蔵。私の旦那だ」
「雪様!?あなたは由緒正しき佐竹家の姫君なのですぞ?どこの馬の骨とも分からぬものを旦那とは、どういうことですか?」
雪の横に立つ雄蔵は苦々しく思うが余計なことは言わない。この三日このようなばかりだが、喧嘩をするために雪の横にいるわけではない。
「雄蔵はいい男だ。直に分かる」
雪ににこりと微笑まられてそう言われては相手も押し黙るしかなかった。
現在まで、泰宗の屋敷にはすでに百人近くの者が集まっている。
それは佐竹広臣の徳もそうだが、泰宗の人望もあるのだろう。
泰宗は家臣団の挨拶を一通り終えてから、側にいた息子の宗道に声をかける。
「少々、散歩をしてくる。気を抜くなよ」
「へ?こんなときにですか?」
「こんなときだからだよ」
泰宗は、そう返して一人で屋敷を出ていった。
宗道は首を傾げるが知恵では到底父には敵わぬと知っているから見送った。
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