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そう思い、歯を舌に噛み合わせた時、何かが視界に入り、思い留めた。
気配を消しながら、ゆっくりと音を立てずに人が近づいて来る。
暗くてよく見えないけど…手に何か持ってる……
あれは…ナイフ……??
こいつらは背後に気付かない。
そうして、その人は少し後ろに並んでいたレイプ魔の1人に両足の膝窩の部分、膝裏を引き裂いた。
「あああああああぁぁぁぁぁぁ??!!」
叫び声が上がる。膝から崩れ落ち、足を抑えて蹲っている。
残る2人も何かがあったことに気づいた様だ。慌てて振り返る。
だが、遅かった。
その人は続けざまに1人の膝に突き刺し、もう1人のアキレス腱を刺し抜いた。
悲鳴が空虚の中、木霊する。
「この女の知り合いか??!!」
「……っ、クソ!!何なんだよテメェ!!??」
「何でこんな事すんだよ??!!」
突然の理不尽に訳もわからず叫ぶ。不安をかき消す様に。
その人…その男は感情なく、気だるそうに答える。
?「……趣味…」
格好は黒のジーンズに黒のTシャツ、その上に黒のパーカーを着ており、目元までフードを被っている。黒のレザー手袋に、右手には赤く滴る銀色に輝くナイフが握られている。
顔付きは暗い所為で分かりにくいが、無表情なのは確かだ。
不思議と彼の事を怖いとは感じなかった。助けてくれたからとかではない。そもそも彼は私を助けたつもりはないだろう。彼の興味の対象は明らかに3人に向いており、私の方を一度も見てない。
目撃した私は殺される可能性もあったが、彼なら殺されても良いと感じた。
何故だか知らないが、安心感というものを彼から感じた。
「…貴方の……名前は…??」
私としたことが考えなしに変な質問をしてしまった。変に思われないだろうか…
彼は私を見て、微笑むように笑った。だが、それも一瞬で無表情に戻った。顔は整っており、眼つきは鋭く、まるで不良のようにかなり悪い。しかし、生気は感じられず、静かで穏やかな眼だと思う。
?「………ただの野良犬だ…」
それが私『宮原 凛』と彼『犬井 孝』との出会いだった。
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