第1話 「出会い」

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そう思い、歯を舌に噛み合わせた時、何かが視界に入り、思い留めた。 気配を消しながら、ゆっくりと音を立てずに人が近づいて来る。 暗くてよく見えないけど…手に何か持ってる…… あれは…ナイフ……?? こいつらは背後に気付かない。 そうして、その人は少し後ろに並んでいたレイプ魔の1人に両足の膝窩の部分、膝裏を引き裂いた。 「あああああああぁぁぁぁぁぁ??!!」 叫び声が上がる。膝から崩れ落ち、足を抑えて蹲っている。 残る2人も何かがあったことに気づいた様だ。慌てて振り返る。 だが、遅かった。 その人は続けざまに1人の膝に突き刺し、もう1人のアキレス腱を刺し抜いた。 悲鳴が空虚の中、木霊する。 「この女の知り合いか??!!」 「……っ、クソ!!何なんだよテメェ!!??」 「何でこんな事すんだよ??!!」 突然の理不尽に訳もわからず叫ぶ。不安をかき消す様に。 その人…その男は感情なく、気だるそうに答える。 ?「……趣味…」 格好は黒のジーンズに黒のTシャツ、その上に黒のパーカーを着ており、目元までフードを被っている。黒のレザー手袋に、右手には赤く滴る銀色に輝くナイフが握られている。 顔付きは暗い所為で分かりにくいが、無表情なのは確かだ。 不思議と彼の事を怖いとは感じなかった。助けてくれたからとかではない。そもそも彼は私を助けたつもりはないだろう。彼の興味の対象は明らかに3人に向いており、私の方を一度も見てない。 目撃した私は殺される可能性もあったが、彼なら殺されても良いと感じた。 何故だか知らないが、安心感というものを彼から感じた。 「…貴方の……名前は…??」 私としたことが考えなしに変な質問をしてしまった。変に思われないだろうか… 彼は私を見て、微笑むように笑った。だが、それも一瞬で無表情に戻った。顔は整っており、眼つきは鋭く、まるで不良のようにかなり悪い。しかし、生気は感じられず、静かで穏やかな眼だと思う。 ?「………ただの野良犬だ…」 それが私『宮原 凛』と彼『犬井 孝』との出会いだった。
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