第2話 「新鮮な日常」

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半年間で彼を色々知る事が出来た。 彼は大の動物好きで彼曰く『哺乳類、鳥類、爬虫類』が特に好きらしい。彼に動物は飼わないのか聞いたら、一緒に飼っていた犬が老衰で死んでしまった以来、飼うのは無理だと言う。彼らに嫉妬されてしまうと少し哀しげに笑って話してた。 彼は映画好きだ。 よくTSUTAYAに行って借りる。ジャンルは洋画で、主にアクション、ホラー、サスペンス、コメディである。恋愛系は理解出来ないからつまらないらしく、動物系は死んでしまう悲しいものが多く、泣いてしまうからという理由らしい。彼が泣いてしまうとこはあまり想像出来ないから、是非とも見てみたいのだが絶対に駄目なので無理そうだ。 彼はゲームが好きでよくやる。 ホラー物が多く、あるゾンビシリーズを必ず買ってやるのだと言う。私はやった事がないので時々やらせてもらう。下手ではないが、上手くもない。それでも楽しめるが、私は見ている方が好きだ。無表情の彼の表情が少しだけ変わる。そっちの方が見ていて楽しい。 彼はよく長風呂をする。 大体短くて30分ぐらい、長いと1時間以上入る時がある。いないものだと思い、風呂内に入ってしまった時があった。その際に着替え中の彼に出くわしてしまった。下は短パンを履いてたが、上半身は裸だ。無数の傷と背中に彫った刺青が目に入った。切り傷や撃たれたような刺されたような痕が残っていた。刺青は目が紅く染まった、毛の逆立った黒い狼だ。歯は少しだけ開いた状態で明らかに飛び掛かりそうな威嚇した表情を浮かべている。何故刺青を彫ったのか、それでは温泉に行けないと話した。彼はこう言った。「自分を見失わない為」だと。確かに昔は刺青を彫る際そういう意味で使われていたかもしれない。海外の軍人もそれで彫っているのかもしれない。もっと見たかったが、見れたのはその一回だけだ。お願いしたら、断られた。残念で仕方ない。 彼の事が知れた良い半年間だった。彼が私をどう思っているのかだけが気になる。が、聞き出せない。何故だか自分でも分からない。私が怖がっているのかも知れない。私の望む答えじゃなかった場合を考えてしまっているのだろう。 初めて他人に嫌われるのを危惧してる。 私は変わったのかも知れない。それが良いことか悪いことかよく分からない。 とまぁ、そんなのんびりとした半年間を過ごした。
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