18人が本棚に入れています
本棚に追加
もう何度目の逢瀬だろう。隣に感じる暖かさは心地よいのだが、こんな事を続けていてはいけないと現実を考え始めてもいた。
そしてやはり今日も、女は夜明け前の時刻になると目覚ましも必要なく目覚め、身支度を整えるのだ。
窓の外はいつものように、深く静かに冴え冴えと、優しく、冷たく、けれど暖かい。
「ああ・・・ そう言えば・・・」
珍しく女は支度の手を止め話し始めた。
「こないだ女子会があったのだけど。その時にお友達に言われたのよ」
「なんて?」
普段のクールなイメージからすると、女子会なんてするのかと不思議ではあるが、男は話しに耳を傾けた。
「私と貴方は、まるで・・・《夜の闇》と《月》のようだって。だから言ってやったのよ。私はお月様ほど几帳面じゃないわって。」
たしかに、少々ずぼらな部分がある事は否めない。時折、鼻先に美味しい匂いをつけたままやって来たりするのだから。
「ねえ、君」
「なあに?」
「例えば、君が《月》で、僕が夜の《闇》なら・・・呑み込まれるのは・・・ どっちかな?」
「賭けて、みる?」
その時、女の唇は、月のかたちをしていた。
最初のコメントを投稿しよう!