朝までの、月

3/7
前へ
/7ページ
次へ
もう何度目の逢瀬だろう。隣に感じる暖かさは心地よいのだが、こんな事を続けていてはいけないと現実を考え始めてもいた。 そしてやはり今日も、女は夜明け前の時刻になると目覚ましも必要なく目覚め、身支度を整えるのだ。 窓の外はいつものように、深く静かに冴え冴えと、優しく、冷たく、けれど暖かい。 「ああ・・・ そう言えば・・・」 珍しく女は支度の手を止め話し始めた。 「こないだ女子会があったのだけど。その時にお友達に言われたのよ」 「なんて?」 普段のクールなイメージからすると、女子会なんてするのかと不思議ではあるが、男は話しに耳を傾けた。 「私と貴方は、まるで・・・《夜の闇》と《月》のようだって。だから言ってやったのよ。私はお月様ほど几帳面じゃないわって。」 たしかに、少々ずぼらな部分がある事は否めない。時折、鼻先に美味しい匂いをつけたままやって来たりするのだから。 「ねえ、君」 「なあに?」 「例えば、君が《月》で、僕が夜の《闇》なら・・・呑み込まれるのは・・・ どっちかな?」 「賭けて、みる?」 その時、女の唇は、月のかたちをしていた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加